最強のデジモン資料集 デジタルモンスター25th Anniversary Book
今まで液晶玩具デジタルモンスターの大百科や最強データブックと謳ったタイトルの書籍はいくつも出版されてきたが、デジタルモンスター25周年を記念して出版された「デジタルモンスター 25th Anniversary Book ―Digimon Device & Dot History―」は、現時点ですべてのデジモン液晶玩具の歴史が詰め込まれた最強資料集と言って差し支えないだろう。
本書では、日本中がたまごっちブームに沸いていた1997年に「戦うたまごっち」として歴史の幕を開けた元祖「デジタルモンスター」から2023年にプレミアムバンダイにて発売された「デジタルモンスターCOLOR」まで、全デジモン液晶玩具の歩みが集約されている。
現在のデジモン人気は液晶玩具にとどまらず、アニメやテレビゲームやカードゲームなどそのファン層は多岐にわたっているが、デジモンの原点である液晶玩具にフォーカスしている本書は私のような液晶玩具デジモンファンにとっては間違いなくマストの一冊だ。
本書の概要
本書は大きくチャプター1からチャプター3までの3パートに分かれている。
また冒頭の20ページでは、デジタルワールドの調査経過報告をまとめたドキュメントと銘打って、デジモンやデジタルワールドの成り立ちについて事細かに記述されている。
調査経過報告
本書の冒頭の20ページでは
「デジタルモンスター、デジタルワールドとは一体何なのか?」
「現実世界の我々が『デジモン』と呼んでいるこの液晶デバイスは一体何なのか?」
などといったデジタルモンスターの設定について詳しく知ることができる。
CHAPTER 1: デジタルモンスター
このチャプターでは元祖「デジタルモンスター」から「デジタルモンスターCOLOR」までの液晶玩具について、全登場モンスターのイラストとドット絵や各シリーズの誕生秘話なども併せて紹介されている。
今までも「デジタルモンスター」シリーズや、「デジモンペンデュラム」シリーズの全データをまとめた本は存在したが、ver.20thなどの最新シリーズも含めた全シリーズを網羅的にまとめあげたのは本書が初めてだ。
また当時のVジャンプの特集記事の切り抜きなど、今ではなかなかお目にかかることができない貴重な資料も掲載されている。
こちらのチャプターは情報量が膨大で、本書の全ページの約半分がこのチャプターで占められているほどだ。
CHAPTER 2: デジタルモンスター for The Animation
このチャプターではデジモンのアニメシリーズと連動した「デジヴァイス」シリーズの資料が掲載されている。
1999年に放送が開始されたアニメ「デジモンアドベンチャー」の元祖「デジヴァイス」から、2020年放送開始の「デジモンアドベンチャー:」のリメイク版デジヴァイスである「デジヴァイス:」や、「VITAL BRACELET BE デジヴァイス -VV-」 などについても記載されている。
こちらもチャプター1と同様に各シリーズの誕生秘話や、当時のVジャンプの特集記事の切り抜きなども掲載されている。
また外伝的な位置づけのデジモンアナライザーや、ディーターミナルについてもしっかりと取り上げられている。
CHAPTER 3: デジタルモンスター ミュージアム&ヒストリー
こちらのチャプターでは、2022年夏に開催された「デジモンミュージアム」の展示品の紹介や、過去のゲーム、コミックス、アニメの作品リストが掲載されている。
また初公開のデジヴァイスシリーズの初期デザイン資料や、以前デジモンウェブで募集していたアンケート結果も掲載されている。
最強の一冊、だが不満点も…
歴代の液晶玩具のデジモンに焦点をあてた資料集としては間違いなく過去最大ボリュームであり、25周年記念に相応しい内容であるのは間違いなく、本書を企画・出版してくれたバンダイやVジャンプ編集部には頭の下がる思いだ。
だがせっかく25年の集大成とも言える本書だからこそ、不満点もいくつか見えてきてしまったので、ここではその思いを正直に述べたい。
まずデバイスのカラーバリエーションは全種類掲載してほしかった。例えば初代「デジタルモンスター」シリーズだと各バージョンごとに2色までしか写真が掲載されていない。ver.3の場合だとパープル、オレンジ、クリアパープル、クリアオレンジの全4色展開なのにも関わらず、本書にはクリアパープルとオレンジの2色の写真しか載っていない。一応、一般販売のクリアパープルとVジャンプ限定版のオレンジの写真を載せるなどの配慮は見られるが、他にどんな色のカラーバリエーションがあるかの情報については一切書かれていなかった。特に限定デザインの本体やパッケージについては、多くのファンが掲載を望んでいたと思う。
各デジモンのタイプや属性は書かれているのに、必殺技についての記載がないのも気になった。過去の公式攻略本やデジモンウェブのデジモン図鑑などでも必殺技は必ずと言っていいほど紹介されていた情報なのに、なぜ本書では載せなかったのだろうか。
また、デジヴァイスのページで幼年期デジモンが「この他に、コロモン、ツノモン、トコモン…を収録」という記載のみで、幼年期だけイラストやドット絵が省略されていたのは非常に残念だった。イラストやドット絵の資料が残っていないとは考えにくく、ページレイアウトの関係なのか何なのかはわからないが、本書が実質的に液晶玩具デジモンの資料集という位置づけなのにも関わらず、このような幼年期デジモンを軽視するかのような扱いはファンとして残念でしかない。
あとは欲を言わせて頂くと、海外版のデバイスに関する情報も載せてほしかったが、本書で海外版に触れていたのはチャプター3のデジモンミュージアムの紹介で「レアな海外版も展示されていたぞ!!」という一文とともに展示されている様子の小さな写真1枚が掲載されているのみだった。
これは内容とあまり関係がないが、全163ページあるうちチャプター1が全ページの約半分を占めているのに、チャプター3が僅か8ページしかないのは本の構成として非常にアンバランスに感じた。
冒頭でも申し上げた通り、本書が液晶玩具デジモンの過去最強資料集であることは間違いないのだが、せっかく25周年を記念して出版するのだからこそ、本体カラーバリエーション、キャラクターのイラストや必殺技等の最低限の情報くらいは漏れなくしっかりと載せてほしかった。
あとデジモンCOLORなど現在進行形で新商品が発売されている真っ只中のこのタイミングで本書を出す必要があったのかも些か疑問だ。これ以上出版が遅れると25周年というタイミングを逃してしまうという事情もあったのかもしれないが、そこに拘るよりかは新商品の発売が一旦落ち着いてからその新商品も含めて掲載したものを出版してもよかったのではなかろうか。
とはいえ本書が液晶玩具デジモンで過去最強資料集であることは変わりなく、実際に中身についてもとても満足しており、液晶玩具デジモンファンの一人としてバンダイならびにVジャンプ編集部の皆様には改めて敬意を表したい。
次回は是非、液晶玩具の歴代たまごっちシリーズをまとめあげた資料集を出してほしい。たまごっちはデジモンとは比べ物にならないほどシリーズもカラーバリエーションも豊富なので、もし本気で出版するとなれば膨大なページ数になるが、この際電子書籍や白黒ページでも構わないので是非作ってほしい。