ゲームの改造に係る逮捕・摘発事件まとめ
本稿では主に刑事の面から、実際に摘発された事例を紹介することで、ゲームの改造に係る法的な問題について再確認していきたいと思う。
また、本稿はあくまで過去に報道された事例を紹介する立場であり、法的な助言やアドバイスをするものではない点にも予め留意して頂きたい。
ニンテンドーDSのマジコン販売業者の男を逮捕(2012年)
当時キッズの間で「無料でDSのソフトが遊べる方法があるらしい」と話題になり、社会問題にまで発展したマジコン問題。それに対応する形で2011年12月に改正不正競争防止法が施行されて以降、初めてマジコン販売業者から逮捕者がでた事件。
このような事例は法的には「技術的制限手段の回避」と呼ばれているが、平たく言えばメーカーが施したコピーガードを無効化する装置(マジコン)を販売したことが問題とされた、ということだ。
マジコン販売業者に対する初の刑事摘発――不正競争防止法違反容疑で男性を逮捕 – ファミ通.com
Wii改造代行をネットオークションを通じて請け負った男を逮捕(2012年)
ネットオークションを通じて、Wii本体で海賊版のゲームソフトを起動させるための改造代行を請け負った男が不正競争防止法違反の容疑で逮捕された事件。
このようにマジコンの販売以外でも、技術的制限手段を回避する目的でのゲーム機の改造の「代行」でも、技術的制限手段回避装置提供行為と判断され逮捕されることがる。
オークションを通じて海賊版の販売とWiiの改造を行っていた男性を送致 – ACCS
CYBERセーブエディター事件(2020年)
ゲームのセーブデータを改竄できるプログラムを販売したとして、不正競争防止法違反の疑いでゲーム周辺機器販売会社「サイバーガジェット」と、同社代表取締役の男性ら計3人を書類送検したと産経新聞が報じたこの事件。
これも先述のWiiの改造代行と同じく不正競争防止法の「技術的制限手段の回避」が疑われた事例だが、実はことゲームのセーブデータに関しては以前までは同法の保護の対象外とされてきたが、2018年11月の同法の改正によって従来から保護対象になっていた映像やプログラムに加えて「データ(電磁的記録に記録された情報)」が保護の対象になって以降、ゲームのセーブデータに関しても保護の対象となった経緯がある。
セーブデータ改竄の疑い ゲーム機器販売会社初摘発 – 産経新聞
平成30年改正不正競争防止法が施行されました – ACCS
セーブデータの改造代行、不正競争防止法違反で男性ら初摘発(2019年)
ネットオークション等を通じて「最強データ」などと称してニンテンドー3DSやPS4のゲームのセーブデータの改造の代行業務を提供していた男性らが摘発された事件。
こちらはマジコンのように不正競争防止法で規定されている技術的制限手段を回避する装置の販売や、Wiiの改造代行のように装置の改造代行をしているわけではないが、ゲームソフトのセーブデータに施された技術的制限手段を回避する「役務」を提供したとして摘発された事例だ。
同法ではこのように装置の提供だけではなく、手段や役務を提供することも規制の対象としている。
セーブデータの改造代行、不正競争防止法違反で男性ら初摘発 – ACCS
ポケモンGOの周辺機器を改造して販売した会社員を逮捕(2018年)
ポケモンGO公式から販売されている周辺機器「Pokémon GO Plus」に改造を加えてネットオークションで販売した会社員が商標法違反の疑いで逮捕された事件。
一見すると、先述のWii改造やセーブエディターと同様の事例にも感じるが、こちらの事例は不正競争防止法ではなく「商標法違反」の疑いによる逮捕になっている。
商標には、商品に商標を付けることで、その機能や品質に関わる信頼を付する役割があるが、この事例のように改造によって元の商標を残したままの状態で機能や品質に手が加えられてしまうと、元の商標イメージから期待される機能や品質と、実際の機能や品質との間に捻じれが生じてしまう。このように元の商標を付けたまま改造などにより手を加えて販売をすると民事だけではなく、刑事でも商標法違反となる可能性があるというわけだ。
最近だとフリマアプリやネットオークションなどで、レトロ携帯ゲーム機にバックライトのついたIPS液晶などを取り付ける改造をして元の商標を付けたまま販売している出品者を見かけるが、この様な行為も同様に商標法違反となる可能性があるので注意する必要がある。
「ポケモンGO」対応機器を改造し販売 商標法違反容疑で37歳会社員を逮捕 – 産経新聞
「ポケモンGO」対応機器の改造版を販売して逮捕…なぜ「商標法違反」なのか? – 弁護士ドットコムニュース
本稿では実際に摘発・報道された事例に限定して紹介しているが、これ以外でも改造等によって検挙や訴訟に可能性があると言われている行為は存在する。
ここでご紹介した事案を含めて総じて言えることは、ゲームを改造等で手を加えた物の販売や改造の代行などで金銭的やり取りが発生する場合に法的問題が発生するケースが多く、これらの行為を自身でやる場合は特に注意する必要があるだろう。