小学生時代、カプコンユーザーサポートセンターとの思い出
小学校の時の俺はストリートファイターシリーズが好きだった。
ある日、当時最新作だったSS版「ストリートファイターZERO」のことでわからないことがあり、当時の俺は小学生ながらカプコンのコールセンターである「カプコンユーザーサポートセンター」とやり取りをすることになった。
カプコンに聞いてみたら?
小学校の時の俺にとって父親はゲームマスターだった。
当時のうちの父親はハマったゲームはとことんやるタイプで、SFCの風来のシレンが出た時もずっとシレンに没頭し、説明書の後ろの方に書かれていた「風来のシレン早解きキャンペーン」にも応募して懸賞のマムルぬいぐるみを貰っているほどだった。因みにそのマムルぬいぐるみは今でも当時届いたダンボールとチュンソフトからのお手紙付きで大事に保管している。
今でこそネットの世界を見渡せばゲームが上手な人とも簡単にお目にかかれるが、そんなものがない当時の小学生の俺にとって父親は神のような存在だった。
そんな折、俺はある日ストリートファイターZEROで豪鬼が使えるらしいということを知った。ゲームでわからないことはとりあえず父親に聞くことにしていた当時の俺は、豪鬼の出し方を父親に尋ねたところ「しらんけど、カプコンに聞いてみたら?」とパッケージの説明書に書かれていたカプコンユーザーサポートの電話番号を指で指し示された。
ゲームマスターの言葉は絶対だった当時の俺は迷うことなく説明書に載っていた番号に電話してみることにした。
豪鬼の出し方を教えてください
翌日、よくうちで一緒にゲームをしていた友人と二人でカプコンに豪鬼の出し方を聞いてみることにした。
電話なんて友達の家か婆ちゃんの家くらいにしかかけたことがなかった当時の俺は、幾分緊張しながら受話器を取り、説明書に載っていた電話番号を確認しながらプッシュダイヤルを押した。
トゥルルルル…トゥルルルル…
お姉さん「はい、カプコンユーザーサポートセンターです」
小学生の俺「あ、あの… ストリートファイターZEROを買ったんですけど… 」
お姉さん「ありがとうございます」
小学生の俺「は、はい… で、豪鬼が使えるって聞いたんですけど、豪鬼の出し方を教えてください」
お姉さん「え…?あー… 少々お待ち頂いてもよろしいですか…?」
小学生の俺「あ、はい… 」
そこから数分間ほど保留をされ
お姉さん「お待たせしました。今から申し上げますので紙とペンをご用意ください。えー豪鬼の出し方はですねー… ペラペラッ(書類をめくるような音)」
お姉さん「キャラクター選択画面で?にカーソルをあわせてLボタンを押しながら←←←↓↓↓を押した後にXとYを同時押しして、うまくいくと豪鬼が使えるよになりますよ」
小学生の俺「(メモメモ…)あ、ありがとうございます!」
その後、俺は友達と何回も失敗を重ねながらお姉さんに教えて貰ったコマンドを入力し、ついに豪鬼を出すことに成功した。
カプコンに聞けば何でも教えてくれる
これで味をしめた俺たちは、わからないことがあれば何でもカプコンに聞くようになった。
豪鬼の一件の後、「もしかしてラスボスのベガも使えるのでは?」という話になり、再度カプコンに電話をしてみたところベガの出現コマンドも快く教えて貰えた。
後に「ダン」という謎のピンク色の道着キャラが出せるらしいぞという話を聞きつけた時も、カプコンに電話をしたらすぐに出現コマンドを教えてくれた。しかしダンだけは何度コマンドを入力しても上手く出すことができず、再度カプコンに電話で聞いてみることにした。
小学生の俺「あのー… さっきダンのコマンドを聞いたんですけど、何回試してもダンが出ないんです… 」
お姉さん「ダンはですね、コマンドを1秒以内に入力しないといけないんですよ。豪鬼やベガと比べて少し難しいかもしれないですけど、諦めずに頑張ってチャレンジしてみて下さいね」
と小学生声丸出しの俺の厚かましい質問にも嫌がる素振りひとつ見せることなく優しく対応してくれた。
ある日、カプコンの対応に変化が
しかしある日を境に、カプコンユーザーサポートの対応にも変化がみられるようになった。
たしか最初はロックマンX4でエックスのアームパーツの隠し場所がどうしてもわからずカプコンに電話をかけた時だったと思う。今までは聞いたことはすぐに教えてくれたのに、その頃から直接的な回答を避けるようになり、ヒント程度の回答にとどまるようになった。アームパーツの場所については「○○ステージのどこかにあるので、頑張って探してみて下さいね」という教え方に変わった。しかし言われた通り探してみて、それでも見つけ出すことができず再度電話で聞いた時は答えをちゃんと教えてくれた。今思えば、できる限り自分の力で正解を見つけ出してほしいという配慮だったのだろう。
そしてSS版マーヴルスーパーヒーローズvsストリートファイターでメカ豪鬼の出し方を聞いた時はついに「そのようなことをお教えすることはできません」と突き放されてしまった。しかし俺たちは諦めきれず、時間を開けて再度電話をかけてみると先程とは別の担当者に繋がり、その担当者はメカ豪鬼の出し方を教えてくれた。
この様に、この頃から電話に出る人によって答えを教えてくれたり教えてくれなかったり、100%の答えは言わずにヒントだけ教えてくれたりと対応がまちまちになるようになった。
今ではゲームメーカーに限らず大企業のコールセンターの対応というのはマニュアルに沿って画一的に対応するのが当たり前になっているが、この頃は割とアバウトな対応だったのかもしれない。
完全に余談だが、「スマブラ64の最後の隠しキャラは誰なのか?」という話題が盛り上がっていた時、同じクラスのS君にゲームメーカーに電話をすると色々教えてくれるという話をしたところ、数日後に「任天堂に電話で聞いたら最後の隠しキャラはマリオRPGのジーノだと教えてくれた、出し方も教わったけどお前らには教えない」という話をしていて、その日うちのクラスは一日中その話題で持ち切りだった。ご周知のように、最後の隠しキャラはMOTHER2のネスでありジーノではない。加えて、当時から任天堂の電話サポートはゲームの内容に関する質問は一切受け付けていなかった。小学生にありがちなホラ話だが、今思い返すとネット以前の時代はこの手のゲームに関するデマ情報で溢れていた。
いつしかゲーム内容に関する質問は受け付けないように
カプコンに限らず、いつしかどのゲームメーカーもゲームの内容に関する質問は一切受け付けないようになっていた。
念の為、この記事の執筆に際してカプコンのお問い合わせページを確認したところ、「ゲームの攻略方法や(中略)公式サイトに掲載のない情報はお答えしておりません。」と記載されていた。
今の感覚からすれば至極当然の話だが、かつてはカプコンをはじめゲーム少年にコソッと攻略情報やヒントを教えてくれる粋なゲームメーカーが存在していたという話をひとつここに書き残しておきたい。そしてこの幼少時代の電話での一連のやりとりも、教えてもらった情報でゲームが進んだ時に味わった感動も今となってはすべて良い思い出だ。結局他人の力を借りていることには変わりはないが、おかげで何でもググればすぐに出てくる時代では味わえない感動を味わえたと今では思う。ありがとう、カプコンユーザーサポートセンター。